三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

39

絶望を語ることはたやすい。しかし希望を語ることは危険である。わけてもその希望が一つ一つ裏切られてゆくやうな状況裡に、たえず希望を語ることは、後世に対して、自尊心と羞恥心を賭けることだと云つてもよい。私は本来国体論には正統も異端もなく、国体思想そのものの裡にたえず変革を誘発する契機があつて、むしろ国体思想イコール変革の思想だといふ考へ方をするのである。それによつて、平田流神学から神風連を経て二・二六にいたる精神史的潮流が把握されるので、国体論自体が永遠のナインであり、天皇信仰自体が永遠の現実否定なのである。道義の現実はつねにザインの状態へ低下する惧れがあり、つねにゾルレンのイメージにおびやかされる危険がある。二・二六は、このやうな意味で、当為(ゾルレン)の革命、すなはち道義的革命の性格を担つてゐた。あらゆる制度は、否定形においてはじめて純粋性を得る。そして純粋性のダイナミクスとは、つねに永久革命の形態をとる。すなはち日本天皇制における永久革命的性格を担ふものこそ、天皇信仰なのである。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

40

追ひつめられた状況で自ら神となるとは、自分の信条の、自己に超越的な性質を認めることである。決して後悔しないといふことは、何はともあれ、男性に通有の論理的特質に照らして、男性的な美徳である。事実(ファクト)が一歩一歩われらを死へ追ひつめるとき、人間の弱さと強さの弁別は混乱する。弱さとはそのファクトから目をそむけ、ファクトを認めまいとすることなのか? もしさうだとすれば、強さとはファクトを容認した諦念に他ならぬことになり、単なるファクトを宿命にまで持ち上げてしまふことになる。私には、事態が最悪の状況に立ち至つたとき、人間に残されたものは想像力による抵抗だけであり、それこそは“最後の楽天主義”の英雄的根拠だと思はれる。そのとき単なる希望も一つの行為になり、つひには実在となる。なぜなら、悔恨を勘定に入れる余地のない希望とは、人間精神の最後の自由の証左だからだ。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

988

絶望を語ることはたやすい。しかし希望を語ることは危険である。わけてもその希望が一つ一つ裏切られてゆくやうな状況裡に、たえず希望を語ることは、後世に対して、自尊心と羞恥心を賭けることだと云つてもよい。決して後悔しないといふことは、何はともあれ、男性に通有の論理的特質に照らして、男性的な美徳である。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

989

事実(ファクト)が一歩一歩われらを死へ追ひつめるとき、人間の弱さと強さの弁別は混乱する。弱さとはそのファクトから目をそむけ、ファクトを認めまいとすることなのか? もしさうだとすれば、強さとはファクトを容認した諦念に他ならぬことになり、単なるファクトを宿命にまで持ち上げてしまふことになる。私には、事態が最悪の状況に立ち至つたとき、人間に残されたものは想像力による抵抗だけであり、それこそは“最後の楽天主義”の英雄的根拠だと思はれる。そのとき単なる希望も一つの行為になり、つひには実在となる。なぜなら、悔恨を勘定に入れる余地のない希望とは、人間精神の最後の自由の証左だからだ。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

1148

絶望を語ることはたやすい。しかし希望を語ることは危険である。わけてもその希望が一つ一つ裏切られてゆくやうな状況裡に、たえず希望を語ることは、後世に対して、自尊心と羞恥心を賭けることだと云つてもよい。決して後悔しないといふことは、何はともあれ、男性に通有の論理的特質に照らして、男性的な美徳である。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

1149

事実(ファクト)が一歩一歩われらを死へ追ひつめるとき、人間の弱さと強さの弁別は混乱する。弱さとはそのファクトから目をそむけ、ファクトを認めまいとすることなのか? もしさうだとすれば、強さとはファクトを容認した諦念に他ならぬことになり、単なるファクトを宿命にまで持ち上げてしまふことになる。私には、事態が最悪の状況に立ち至つたとき、人間に残されたものは想像力による抵抗だけであり、それこそは“最後の楽天主義”の英雄的根拠だと思はれる。そのとき単なる希望も一つの行為になり、つひには実在となる。なぜなら、悔恨を勘定に入れる余地のない希望とは、人間精神の最後の自由の証左だからだ。三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

144719

日本古書通信2014年5月15日発売号

    SALVATORE FOREX 日本古書通信2014年5月15日発売号

    本、コミック » 雑誌 » 文芸・総合

    通巻1,000号をこえた伝統と信頼 必ずあなたを古書の奥深い世界へご案内いたします☆2014年5月号(5月15日発行)主要記事目次≪本と人≫◆幻の本ついに出現!三島由紀夫「サド侯爵夫人」に私家限定本 山中剛史)◇天理ギャラリー第152回展「漢籍と日本人」展瞥見 上 (淵田マサバ)◇原道生著「近松浄瑠璃の作劇法」公刊の意義 (林久美子)◇近衛前久の遊び心 下 (安藤武彦)≪特集≫ ◆震災後の文化復興―福島の博物館と古書店 (折付桂子)≪古本屋≫◆21世紀古書店の肖像40 山本書店 (古賀大郎)◆古本屋大陸古書の売買や収集に役立つ実利的な記事をはじめ、古本愛好者や研究家・古書店主たちの知識や経験談、書物随筆、書誌情報、出版界・学界・図書館界のニュースなど毎号満載しています。各地の有名古書店による古書の通信販売目録も本誌ならではの人気ページ。古本屋開業を目指す

こちらもお勧め三島由紀夫

この投稿へのコメント

  1. salvatore forex

    三島由紀夫““道義的革命”の論理――磯部一等主計の遺稿について”より

コメントを入力するためにはログインが必要です。

トラックバック・ピンバック

トラックバックはありません。

トラックバック URL